「熊本モデル」で里親開拓 児童養護施設や乳児院と連携
2023年03月22日 福祉新聞編集部熊本県で里親を開拓する取り組みが進んでいる。県内の乳児院を運営する社会福祉法人などに里親のリクルートやマッチングなどを行う「フォスタリング機関」を委託。同時に県内の児童養護施設や乳児院とも連携する「熊本モデル」を掲げる。かつて全国の自治体で里親委託率が最下位だった熊本県の現状を追った。
低い委託率
2019年度の熊本県の里親委託率は12・2%と、児童相談所が設置されている70都道府県市別で最下位を記録。また、政令市である熊本市も12・7%と同様に低かった。理由について、県健康福祉部子ども家庭福祉課は「県内には児童養護施設が12カ所、乳児院が3カ所あるなど、社会的養護の受け皿が充実していたことも要因の一つ」と説明する。
しかし厚生労働省が里親委託率を上げる目標を示したことから、熊本県もかじを切った。
20年3月に県が熊本市とともに策定した社会的養育推進計画では、里親等委託率を24年度に26・9%とする目標を掲げた=表。
六つの機能
そうした目標に向けて掲げたのが、県内の児童養護施設や乳児院と連携する「熊本モデル」だ。
県内に3カ所ある児相ごとに民間が運営するフォスタリング機関を設置し(1)リクルート(2)研修(3)マッチング(4)アフターフォロー――などを強化。同時に、施設に配置されている里親支援専門相談員や、県里親協議会と連携することで、重層的な体制を目指す。
県子ども家庭福祉課は「施設はすでに組織としての専門性がある。計画が絵に描いた餅にならないよう実効性を重視した」と狙いを語る。
フォスタリング機関は20年度に、熊本県と熊本市がそれぞれ公募し、県北を社会福祉法人慈愛園、県南を元熊本県児相職員が立ち上げたNPO法人優里の会、熊本市を社会福祉法人熊本市社会福祉協会が担当することに決まった。
連絡会も設立
受託した3法人の担当者は、16年から里親を対象にした「フォスタリングチェンジ・プログラム」のファシリテーターとして県内で活動もしていたという共通点もある。
これは英国で開発されたもので、上鹿渡和宏・早稲田大教授が国内に導入。里親がこどもの行動の背景にあるニーズに気づいて対応できるようになると注目されている。
熊本市社会福祉協会が運営するフォスタリング機関アグリで、責任者を務める傘正治さんは「すでに県内でフォスタリング機関を担う3団体で連絡協議会も発足させた。こどもを第一に考え、支援にあたっての連携や情報共有をきっちりやっているのが熊本の強みだ」と話す。