生活を広げる福祉用具

2023年0224 福祉新聞編集部

 「福祉用具は何のためにあるのか」。加齢や病気、ケガなどによって身体が不自由になると、今まで当たり前にできていたことができなくなったり、やりづらさを感じたりします。治療や訓練をして再びできるようになることが理想ですが、それが難しく生活動作に支障が残る場合は、方法を工夫したり、便利な道具を利用したりすることで、毎回誰かに介助を頼まなくても済むかもしれません。福祉用具は選び方を間違わなければ、生活動作の幅を広げ、自立を助けてくれる便利な道具です。今回は更衣・整容を助けてくれる福祉用具を紹介します。

靴下を履く

 股関節を深く曲げられず足先に手が届かない場合は「ソックスエイド」が有効です。ひもを引っ張って靴下を履きますが、ひもを持つことが難しい場合は、先を輪にして手や腕を引っ掛けて引っ張るとよいでしょう。ひもの長さを調整するとより力が入りやすくなります。ソックスエイドを1人で使うには、靴下をセットするための指の力と両手で操作できることが必要です。また、かかとまでしっかり履くには足先が多少でも下方向に動く可動域が必要です。慣れるまではソックスエイドに靴下を通す過程が難しいと思いますので、履き口が緩めの靴下か、スニーカーソックスなどの長さの短い靴下を使用するとよいでしょう。

 

ソックスエイド

 

 着替えやすくするためには、福祉用具以外に、ゆったりとしたデザインや、ボタンを飾りボタンにしてマジックテープで合わせるなど工夫された洋服を選ぶという方法もあります。ご自身にあった方法を取り入れて、動作の負担を少なくしつつ、おしゃれも楽しんで下さい。

ボタンを掛ける

 手指の変形や握力低下でボタンの細かい操作が難しい場合は「ボタンエイド」が有効です。ボタンエイドをうまく使うには、柄を安定して持てることと、先の金具にボタンを引っ掛けるための手首や肘の動きが必要です。もう片方の手でボタンホール側の布をつまんで押さえられることもポイントです。柄の太さ、形状がさまざまなので、持ちやすく操作しやすい物を選びましょう。

歯磨き

 歯ブラシが細くて持ちにくい場合には、柄に差し込んで使用することができる太柄の「ハンドルスポンジ」が有効です。歯ブラシを小刻みに動かすことが難しい場合には、電動歯ブラシに取り付けることで、自分で歯を磨くことが可能になります。柄の太さ、差し込み口の形状がさまざまなので、使用する歯ブラシに合わせ、持ちやすい物を選びましょう。歯磨きそのものが難しい場合には、液体歯磨きという方法もあります。

 

 そのほか、瓶のふたを開け、手のひらに化粧水を出すといった両手操作が難しい場合には、スプレー式の容器に詰め替えるなど、道具を工夫することで、動作の範囲を広げることができます。身だしなみを整えると、生活にメリハリがつき、人と会うことや外出への意欲につながります。

 

 上手に道具を活用し、福祉用具による動作自立を援助し、少しでもご自身でできることが増えるのは喜ばしいことであり、医療・介護職員にとって何よりもうれしいことです。

 

筆者=下川和也 東京品川病院 主任

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長

 

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