いわゆるムセについて

2022年1021 福祉新聞編集部

 食事中、水分を飲む際など、日常でムセてしまうことは誰しもあります。人が食べ物を食べるという動作には、(1)目の前にある物が食べ物であると認識する(認知期)(2)口に食べ物を入れてから咀嚼し、喉に通りやすい塊にする準備をする(準備期)(3)口の中から喉の奥に送り込む(口腔期)(4)ゴックンと飲んで食道へ運ぶ(咽頭期)(5)食道から胃に運ぶ(食道期)――の5期に分類されます。

 

 5期のどの部分に機能低下が起きてもムセや誤嚥のリスクは高くなります。しかし、その中でも咽頭期に問題があるとムセがよくみられるのです。喉には食道と一緒に気管が並列しています。ゴックンという飲み込みがうまくいかないと気管に食べ物が入ってしまい、防御反応でムセが出てきます。ムセは気管に食べ物が入って誤嚥しないようにするとても大切な役割をしています。

 

 今回は飲み込む段階の咽頭期でムセないための筋トレを説明したいと思います。

 

 (1)開口訓練(難易度★)

 

 思いっきり口を大きく開けて10秒キープします。5回繰り返します。※顎関節症など顎の関節に不安がある方は控えてください。

 

 (2)舌突出訓練(難易度★)

 

 思いっきり口を大きく開けたまま、舌を最大限に出したまま10秒キープします。5回繰り返します。※顎関節症など顎の関節に不安がある方は控えてください。

 

 (3)嚥下おでこ体操(難易度★★)

 

嚥下おでこ体操

 

 額に手を当てて抵抗を加えて、おへそをのぞき込むように強く下を向きます。

 

 ・5~10秒間ゆっくり数えながら持続を5セット繰り返します。

 

 ・1~5秒数えることを10回程度反復します。 

 

 (4)シャキア法(難易度★★★)

 

シャキア法

 

 べッドなどに仰臥位になり、肩をしっかり床につけ、頭だけ足のつま先を見るように挙上させます。

 

 ・1分間持続、休憩1分を3セット繰り返します。

 

 ・頭だけを上げて下ろす動作を30回繰り返します。

 

 (5)シャキア法~改訂版(難易度★★)

 

 べッドなどに仰臥位になり、肩をしっかり床につけ、ベッドギャッジを45度程度付けます。そのまま、顎を引いておへそをのぞきこむように頭だけ挙上させます。

 

 ・10秒間持続、休憩1分を3セット繰り返します。

 

 ・頭だけを上げて下ろす動作を30回繰り返します。

 

 記載している回数は目安となっていますので、一人ひとりの状況に合わせて回数や秒数は調整してください。1日2~3セット実施するとより効果的です。少しでも喉の衰えを予防し、ムセなく楽しい食事を続けていけるようにしていきたいものです。

 

筆者=小池奈歩 五反田リハビリテーション病院 主任

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長

 

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