食事と摂取量
2022年10月07日 福祉新聞編集部高齢者の低栄養の割合は年を重ねるごとに増える傾向にあります。厚生労働省が発表した「令和元年国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の高齢者の低栄養傾向の割合は男性12・4%、女性20・7%、85歳以上では男性17・2%、女性27・9%となっています。低栄養になると筋肉量が落ち活動量が減り、食事の摂取量が落ちてしまいます。この悪循環を繰り返すと寝たきりになってしまうリスクがあります。そのため日々必要なエネルギー量を摂取し、適宜運動が必要となります。しかし、食事だけで必要なエネルギー量を摂取することが難しいことがあります。
そこで今回は、当院で行っている工夫をいくつか紹介します。
見た目を変える
病院食は味が薄い、おいしくないというイメージがついていることがあります。病院の食器は割れにくいプラスチック製やアルミの物が使われ、見た目で冷たい印象があることや、定期的な食材での食事の提供となり飽きてしまうこともあります。
そのようなことを回避するために、当院では月に1回以上はイベント食を実施しています=写真。祝日などはそのお祝いに合わせた食事を提供することや、お皿を変えることで見た目が変わります。普段食べていない食事や食器で提供することで、見た目が変わり食欲が増すことがあり、食事摂取量が多くなることがあります。
栄養補助食品の使用
少量でカロリーが取れるように当院ではさまざまな栄養補助食品を取り入れています。飲み物が進む患者さんにはジュースやコーヒーなどを。甘い物が好きな患者さんにはゼリーやムースのような栄養補助食品を。甘いものが苦手な患者さんには、豆腐味やポテトサラダ味などの塩味の物を。
食事とともに提供することはもちろん、おやつの時間やリハビリテーションの間に提供して、必要なエネルギー量の確保ができるように工夫しています。
家族の協力
病院に入院していると家族団らんの食事場面が作れなくなってしまいます。デイルームなどでほかの患者さんと食事をする場面を作ることはできますが、会話が弾むことは少ないです。なかなか食欲がわかず摂取が進まない患者さんには家族に病前好きだった食事やおやつを持ってきてもらうことや、テレビ電話で家族と会話をしながら食事をすると摂取量が多くなることもあります。家族の力はすごいものです。
嗅覚・聴覚を刺激
人間には五感があります。前述した視覚もそのうちの一つです。ほかには嗅覚・聴覚でも食欲がわくことが多くあります。ステーキを焼く匂いや音で食欲がわいてくることもあります。少しでも感覚を刺激する食事を提供できるよう日々心掛けています。
入院生活で飽きがこないよう楽しい食事を提供し、必要なエネルギー量を摂取できるよう日々検討しています。当院の工夫が少しでも皆さんの参考になれたら幸いです。
筆者=小池奈歩 五反田リハビリテーション病院 主任
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長