ポジショニングで改善
2022年08月26日 福祉新聞編集部毎朝腰が痛い
ある日のリハビリで患者さんから「毎朝ベッドから起き上がるときに腰が痛くなるのよね。どうしたらいいかしら」と相談を受けました。リハビリで運動療法やリラクゼーションをした後は腰痛が楽になるそうですが、朝になると痛みが戻ってしまうとのこと。
ポジショニングは膝の下へクッションを入れ、腰が反らないように対応していましたが、腰痛は続いていました。何が原因なのか詳しく話を聞いていると、どうやら低い枕が苦手で家では高さのある枕を使っていたようでした。
そこで、試しに枕の下へタオルを敷いて少し高くしてみることにしました。
その翌朝、本人が「今朝は腰が痛くなくてとても楽になったのよ。ありがとう」と言ってくださいました。
ポジショニングは身体とマットレスの間に隙間を作らないことがポイントです。患者さんの身体とベッドの間に隙間はないか、実際に手を入れて確かめてみると、見た目では分からない隙間があったりします。また、病院生活は自宅生活と環境が異なることが多いです。そんなときには自宅での生活を細かく聞き、住み慣れた自宅での生活に近付けてあげると身体も心も負担が少なくなります。
自分で食事を取れるように
安全な病院生活を送るために車いすを利用する方が多いです。ある患者さんは車いすに座っていると体が横に倒れてしまい、よくご飯をこぼしてしまうので食事介助が必要でした。
ある日、患者さんにリハビリの目標を聞くと「1人でご飯が食べられるようになりたい。家族に迷惑をかけたくないの」とのこと。
そこから車いすポジショニングの基本として、フットレストから足を下ろし、足底は地面にしっかり接地するように足台を使用しました。また、机の高さは患者さんの身長に合わせ、調整可能なテーブルも用意してみました。
しかし、なかなか改善しません。なぜ改善しないのかと悩んでいたとき、車いすの座面がたわんでいることに気が付きます。「もしかして……」と思い、実際に車いすに座ってみると、とても座りにくく姿勢を左右に傾けたくなりました。「これでは食事が食べにくい」と思い、座面を真っ直ぐにするためにクッションの下へ硬めの材質(段ボール)を入れてみました。すると体が横に倒れなくなり、ご飯をこぼすことが少なくなりました。
それからというもの、1人で食事を食べられるようになり、その様子を見た家族も驚いていました。長い間使用している車いすの座面は伸びてたわんでしまうことがあります。実際に車いすに座ってみると感じますが、長く座ることは健常な人でも大変なことです。
ポジショニングは実際に患者さんの立場に立ってみることが大切です。もちろん考えることも大切ですが、実際に経験・体験することで気付けることがあります。実際にベッドで寝てみたり、車いすに座ってみたりすると、良いポジショニングに気付けるかもしれません。
筆者=原宿リハビリテーション病院 主任 白椛郁美
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。