障害者施設で取り入れた「タッチケア」 全国への普及目指す

2022年0804 福祉新聞編集部
タッチケアをすると職員の表情も柔らかくなる=ピアしらとり

 障害者支援施設や特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人征峯会(渡辺和成理事長、茨城県)は職員による利用者への「タッチケア」を推進している。服の上から背中、腕などに手のひらを軽く当ててゆっくり動かすもので、渡辺理事長は利用者だけでなく職員もリラックスできると判断。そのノウハウを全国に普及しようと動き出した。

 

 率先して採り入れた障害者支援施設「ピアしらとり」(茨城県筑西市)の石井浩之施設長は「職員と利用者は支援する側・される側という縦の関係になりがちだが、タッチケアはそれをフラットな横の関係に変える」と指摘。施設内虐待を防ぐ上でも効果があるとみている。

 

 導入のきっかけは渡辺理事長が2018年12月、リラクゼーション事業の運営会社社長と出会ったこと。2年間試行錯誤を繰り返し、21年6月から本格的に導入した。

 

 特別な道具は不要で、所定の研修を受けた職員が手のひらを毎秒10~30センチ動かし、昼休みや就寝前に最長で10分間〝施術〟する。

 

 ピアしらとりは短期入所を含め定員60人。知的障害や自閉症のある人が主な入所者で、タッチケアを受けるかどうかは任意だ。

 

 いつ受けるかも特に決めないゆるい取り組みだが、施術前と後の心拍数などの数値を比べた客観的な効果も確認済みだ。

 

 これまで法人内の障害者グループホーム入居者などを含め計200人がタッチケアを受け、約9700件の実施データがそろった。

 

 手応えを感じた法人幹部らはそのノウハウを全国に広げようと、日本福祉タッチケア協会(東京)を発足。石井施設長は「タッチケアは障害分野だけでなく、広く福祉のあり方を変えるだろう」と意気込んでいる。

 

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