草の根の国際交流〈コラム一草一味〉
2025年12月14日 福祉新聞編集部
末光茂 社会福祉法人旭川荘 前理事長
2025年は、地球上の各地で紛争と暴力が広がり続けた厳しい1年だった。しかし最後に、次世代を担う若者への期待を強くする出来事が三つあった。
まずは天皇・皇后両陛下の長女、愛子さまの初めての公式海外訪問がラオスだったこと。国家主席への表敬訪問や不発弾被害の発信拠点などの視察、民族衣装に現地語でのあいさつ。うれしく思ったのは、青年海外協力隊員との面談だ。ご出発1週間前の11月13日、東京有楽町の国際フォーラムを会場に、JICA海外協力隊発足60周年記念式典が、天皇・皇后両陛下のご臨席の下に開催されたばかり。60年前の第一陣の派遣先がラオスだった。
現在の48人を含め、延べ1110人がラオスで草の根活動に献身してきた。この60年間、アジア、アフリカ、中南米を中心に99カ国で、5万8000人にも及ぶ若者たちが、2年間厳しい条件下で、現地に溶け込んで献身を重ねてきた。まさにラオスの第1陣は、大河の一滴と言える。
二つ目は、愛子さまが最後に訪問された小児病院の案内役が、看護師の赤尾和美さんだったことだ。この人は長年カンボジアで小児病院建設に尽力した。他国頼りでない、現地人による病院運営を実現し、赤尾さんは次の赴任先にラオスを選んだ。岡山後楽園ロータリークラブなどが15年以上関わってきたのは、一貫した草の根活動の素晴らしさゆえだ。
草の根は、地上からは見えないが、寒い時も暑い日も地上の草木を地下でしっかり支え、時が来れば花を咲かせ実をつけさせる。
三つ目は、10月にシンガポールで開催された国際知的・発達障害学会のアジア太平洋会議。160題のポスター発表から5分野の表彰があり、最優秀賞3題を日本人が受けた。その1題は流通経済大グループで、発達障害児を抱える日本在住のインドネシア人家族支援だった。
地球上の国と人は身近になり続けている。一日も早い平和を願い、心新たに草の根の国際交流のさらなる広がりを期待している。

