まずは家族の孤立防げ 依存症啓発イベントにおおたわ史絵さんら(厚労省)
2025年03月10日 福祉新聞編集部
厚生労働省は2月26日、著名人を招いた依存症の啓発イベントを都内で開き、オンライン中継を含め481人が視聴した。依存症の人が回復するには、まずはその家族が孤立しないようにすることが大切だとするメッセージを発信した。
「家族が振り回され、地獄のような日々だった。母に死んでもらいたいと思っていた」――。薬物依存症の母との10年にも及ぶ葛藤を自著につづった医師のおおたわ史絵さんは、静かにこう語った。
体が弱く鎮痛剤や睡眠導入剤が欠かせなかったという母との暮らしは「薬剤を投与した後の注射器が家中に転がっていた」。当時は依存症という概念が浸透しておらず、「どこの病院に行っても取り合ってもらえなかった」と話した。
プロレスラーのダンプ松本さんも、幼少期に父がギャンブルにのめり込んで生活がすさんだ経験を語った。「父はお金がなくて母の財布から盗んで賭けていた。依存症だったのかもしれない」と回想。そんな父に殺意すら芽生えたという。
アルコール、ギャンブル、薬物などを止められずに苦しむ依存症は、異変に気付いた家族が本人を立ち直らせようと躍起になるものの、思うようにいかずに孤立し、そのことが依存症の人に悪影響を与えると言われている。
依存症の人の家族会につながったことで活路が見えたというおおたわさんは「家族は良き治療者にはなれない。家庭内の風通しを良くすることが何よりも大切だ」と説いた。
依存症治療が専門の松本俊彦医師も「依存症の人に普通の優しさは通用しない。家族は精神保健福祉センターなどに相談に行くべきだ」とし、実例を通して依存症の人との接し方を学ぶことが大切だと唱えた。
厚労省は依存症啓発の特設サイトを設けており、今回のイベントの模様は今月中にユーチューブで配信する。