23年度、施設での虐待 障害、高齢いずれも過去最多

2025年0116 福祉新聞編集部

障害者1194件

厚生労働省は12月25日、2023年度に自治体が対応した障害者福祉施設・事業所職員による虐待が過去最多の1194件(前年度比25%増)あったと発表した。虐待の相談・通報(5618件、37%増)、虐待を受けた障害者(2356人、74%増)も最多を更新した。

厚労省は前年度から大幅に増えた要因として、グループホーム運営会社「恵」の組織的な食費の過大徴収を、自治体が経済的虐待と認定したことや、21年度の障害報酬改定で施設・事業所に職員研修などを義務付けたことで通報が徹底されたことを挙げた。

虐待があったのはグループホーム、障害者支援施設、生活介護、放課後等デイサービスの順に多い。

虐待した職員は1345人(247人増)。生活相談員が4割、管理者、世話人が各1割。虐待した理由の上位は「教育・知識・介護技術の問題」「職員のストレス」「倫理観や理念の欠如」。

虐待を受けた障害者は男性が67%、種別では知的障害者が74%で突出して多く、障害支援区分では4、5の重度者が47%を占めた。

虐待の内容は「身体的虐待」「心理的虐待」が多く、恵の影響で「経済的虐待」も増えた。虐待による生命や身体への影響は軽度が69%、重度が8%。死亡が1人(50代男性)いた。

自治体の虐待事案に対する権限行使では、改善命令、指定効力の全部または一部停止、指定取消が計52件(30件増)あった。

一方、親や親族による虐待に関する相談・通報は9972件(15%増)。そのうち虐待と判断されたのは2283件(8%増)、虐待された障害者は2285人(7%増)で、いずれも過去最多となった。

高齢者1123件

厚生労働省は12月27日、介護施設職員による高齢者虐待件数が2023年度は1123件に上り、3年連続で過去最多を更新したと発表した。前年度から31・2%増となり、初めて1000件を超えた。虐待による死亡事例は5件だった。

調査は高齢者虐待防止法に基づき07年度から実施。全国の自治体で行われた高齢者への虐待対応状況をまとめている。

施設種別では、特別養護老人ホーム(31%)が最も多く、有料老人ホーム(28%)、グループホーム(14%)と続いた。通報者は施設職員(29%)▽施設管理者(17%)▽家族・親族(15%)――などだった。

また、虐待の種別は▽身体的虐待(51%)▽心理的虐待(24%)▽ネグレクト(22%)▽経済的虐待(18%)▽性的虐待(3%)――の順だった。

虐待の発生要因は▽虐待などに関する知識不足(77%)▽ストレス(68%)▽倫理観の欠如(67%)――などが挙がった。

一方、高齢者が家族や親族から受けた虐待に関する相談件数は11年連続増の4万386件で、過去最多を更新した。虐待と判断した件数は1万7100件にも上った。虐待による死亡は27件だった。

虐待者の続柄は▽息子(39%)▽夫(23%)▽娘(19%)。虐待の種別は▽身体的虐待(65%)▽心理的虐待(38%)▽ネグレクト(19%)▽経済的虐待(16%)▽性的虐待(0・4%)――と続いた。

通報者は警察(34%)が最多で、介護支援専門員(25%)、家族・親族(8%)などの順だった。