発達障害当事者団体の全国ネットが年度内に発足 法制定20年、歴代担当官もエール

2024年1003 福祉新聞編集部
各地の当事者が大塚氏(左端)ら歴代の厚労省担当官と意見交換した

発達障害のある人の意見を年金や就労支援といった国の政策に反映させようと、各地の当事者団体が全国ネットワークをつくることが9月22日、発達障害者支援法の制定20周年を記念するフォーラムで分かった。今年度内に会則を決め、ホームページを立ち上げる。

当事者の意見を集約できる代表性を持った組織が、政策立案する上で必要だと判断した。従来は親や医師らが発達障害のあるこどもの代弁をすることが多かった。

フォーラムは発達障害当事者協会(新孝彦代表、東京)が都内で開いた。大阪や名古屋など各地で当事者会を主宰する人が登壇。発達障害者に関する厚生労働省の歴代の担当官と「ピアサポート」「手帳制度」などについて意見交換した。担当官は全国ネットの発足に期待を寄せた。

診断は推計87万人

発達障害は自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などの総称。厚労省の「生活のしづらさ調査」によると、医師から発達障害と診断された人は2022年12月時点で推計87万2000人。16年12月の調査と比べ、約39万人増えた。

特定の物事に強くこだわったり、他人との意思疎通が苦手だったりする。そのことが引きこもり、うつ病、依存症につながり、副次的な生きづらさを生むこともある。

知的障害を伴わない発達障害の人が成人になると、福祉施設に通って支援や訓練を受けるというよりも、就労、結婚、出産、育児、余暇活動といった場面で周囲の配慮を必要とすることが多い。

発達障害者支援法は04年12月、議員立法により成立。障害特性やライフステージに応じた支援を国・自治体・国民の責務として定めた。

制定当時、厚労省の専門官だった大塚晃・元上智大教授は「私はこの法律に『障害』という言葉を使うことに疑問があったが、将来、この言葉を使わなくても必要なサービスを受けられるよう改革する狙いがあった」と振り返った。