2割負担対象拡大で4案 介護保険部会で議論〈厚労省〉
2025年12月06日 福祉新聞編集部
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会(部会長=菊池馨実早稲田大理事)が1日に開かれ、介護保険の利用料を、2割負担する対象者の拡大に向けて議論した。会合で厚労省は現在の280万円となっている年収の基準を最大230万円まで引き下げる4案を提示。同時に急激な負担を抑制するために増額の上限を設定する案なども示した。
現在、介護保険の利用料は原則1割負担だが、単身世帯で年収が280万円以上なら2割、340万円以上なら3割負担となっている。要介護認定者約715万人のうち、2割負担は4・7%、3割負担は4・2%を占めているのが現状だ。
厚労省は被保険者の保険料水準が継続的に上昇する中、現役世代を含めた保険料水準の上昇をできる限り抑える必要があると判断。これまで高齢者世帯の貯蓄額の状況を踏まえ、対象範囲を広げるかを議論してきた。
会合で厚労省は2割負担とする所得基準について▽260万円(夫婦326万円)▽250万円(同316万円)▽240万円(同306万円)▽230万円(同296万円)とする4案を提示。対象者は1割負担の時と比べ最大月2万2200円増えるという。
同時に、急激な負担増を抑制するための配慮措置も示した。一つは負担増を当分の間、最大で月7000円に抑える案。これは負担が増える最大額の約3分の1に当たる。
また、預貯金などが一定額未満の場合は、申請により1割負担に戻す案も示した。対象は補足給付と同様に、有価証券などとし、資料をつけて自己申告する仕組みだ。不正が発覚した場合は加算金の徴収規定も設ける。
会合で認知症の人と家族の会の和田誠代表理事は、物価が上がる中で2割負担の対象拡大に反対の立場を表明し「年金収入に頼る多くの利用者がサービスを諦めるなどして暮らしが苦しくなる」と述べた。
全国老人クラブ連合会の松島紀由常務理事も「月2万2200円の負担増は、年収の1割に当たる。上限月7000円の経過措置が終わった後は相当な負担になる」と指摘。また、申請方式で1割負担に戻す案については高齢者にとっても負担が大きいと懸念した。
一方、自治体からは事務負担の軽減を求める声が相次いだ。
全国知事会は「能力に応じて適切な負担をお願いすることは、制度の持続可能性を高める上で不可欠だ」とし、事務負担軽減に向けた体制づくりを要望。全国町村会の中島栄美浦村長(茨城県)も「人手不足が顕著な役場では、補足給付に関する預貯金の確認業務だけでも負担なのが実情だ」と述べ、丁寧な制度設計を求めた。

