「身寄りなし」に新事業 高齢者死亡後の事務など〈厚労省検討会〉
2025年05月31日 福祉新聞編集部
厚生労働省は5月20日、頼れる親族など身寄りのない高齢者を支える事業を創設する方針を固めた。日常の金銭管理など生活支援に加え、病院や介護施設に入院・入所する際の手続きや、本人が亡くなった後の事務を担う。社会福祉法を改正し、第2種社会福祉事業に位置付ける。
現在の日常生活自立支援事業を拡充し、社会福祉協議会を主な実施主体と想定する。同日の地域共生社会の在り方検討会議(座長=宮本太郎中央大教授)の中間報告案に盛り込んだ。委員から創設を反対する意見はないが、事業の範囲や財源、担い手確保の点を不安視する声が上がった。
単身高齢者が病院や施設に入る際や、賃貸住宅を探す際、家族など身元保証人がいないと断られることが少なくない。死亡後の遺品整理、葬儀・埋葬などの担い手を明確にしておきたいというのが受け入れ側の本音だ。
日常生活自立支援事業は認知症高齢者など判断能力が低下した人の福祉サービス利用を支えるもので、身元保証人の機能までは持たない。実施主体は都道府県・政令市社協で、高齢者らには少額の自己負担が発生する。
民間企業が最期まで家族代わりを担う「終身サポート事業」は利用料金が高額の場合が多く、近年、事業参入が急増。政府は2024年6月、事業者向けのガイドラインを作成、業界団体をつくる動きもある。
厚労省はそうした民間のサービスを利用する資力のない人でも、安心して利用できる新たな事業が必要と判断。具体的な事業内容は不明で、中間報告案は「家族代わりと誤解されないよう守備範囲を整理する」ことにとどめた。
中核機関を法定化
中間報告案は、国の成年後見制度利用促進計画が定める「中核機関」を法定化し、その名称を「権利擁護支援推進センター」とすることも盛り込んだ。
中核機関は認知症高齢者らの権利擁護を担う専門職と、その監督にあたる家庭裁判所によるネットワークの事務局機能を担う。全市町村の約7割が整備済みで、社協が中核機関になる例が多い。
法的な根拠がなく、その権限があいまいだとする指摘がある。法務省が見直しを進める成年後見制度の運用上も、法定化された権利擁護機関が市町村ごとに必要だと判断した。