カスハラ対策を義務化 法改正で労働者保護へ

2025年0614 福祉新聞編集部

顧客や取引先が理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)から労働者を保護するため、全企業に対策を義務付ける改正労働施策総合推進法などが4日、参議院本会議で可決、成立した。衆議院は一部修正し、企業に求める対策に「実効性を確保するための措置」を盛り込んだ。フリーランスで働く人の保護の検討規定も付則に明記した。施行は一部を除き公布日から1年6カ月以内。

カスハラ対策は自治体にも義務付ける。具体的な内容は国が策定する指針で示す。被害発生時の対応方針をマニュアルで明確にすることや、相談体制の整備などを想定する。不十分であれば国が是正を指導、勧告し、従わない企業は公表する。

罰則はなし

パワハラやセクハラは企業に防止義務があるが、カスハラにはなかった。パワハラやセクハラと同様、対策を取らない企業への罰則はない。

カスハラは「社会通念上、許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害する言動」などと定義した。加害者は顧客や取引先、施設利用者など幅広い。

改正により労働者保護が進む半面、顧客の権利を過剰に制限する恐れもあるため、具体的な運用のよりどころとなる国の指針が重要になってくる。

障害者に意見聴取

例えば、障害者がサービスを利用する際、社会的障壁を取り除くよう申し出ることは合理的配慮を求めるものと言える半面、カスハラと捉えられる可能性も否定できない。

そのため衆院、参院とも、指針策定にあたって障害者の意見を聞くよう政府に求める付帯決議を採択した。

また、カスハラへの対応としてサービス提供をやめた場合、その顧客の生命や健康に大きな影響が及ぶことも起こり得る。

そこで参院の付帯決議は、医療・介護分野を含む公務・公共現場ではサービスが途絶しないことに最大限の配慮をするよう求めた。女性活躍法10年延長

改正法案の一つ「女性活躍推進法」の期限は10年延長し、36年3月末までとした。26年4月からは従業員101人以上の企業を対象に、管理職に占める女性比率や男女間の賃金格差の公表を義務付ける。

このほか改正労働施策総合推進法は、病気やケガを負った労働者が治療と仕事を両立できるよう対応することを企業の努力義務とした。

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