〈論説〉がんと障害年金 強い味方があるのに
2026年09月20日 福祉新聞編集部
治療困難ながんを病む中年女性から「自営業で収入は途絶え、経済的な支援がほしい」と相談された。
病気やけがで生活や仕事に長期間支障が出る際は「障害年金の対象」と助言したら、「がんも対象ですか」と驚いていた。
難病で動けない人もいる、家事や買い物を自力ではできない人もいる。仕事は続けても在宅勤務や短時間勤務などと制限される。そんな人々が対象だ。
長期間とは、初めて診察を受けた「初診日」から原則1年半経過、またはその期間内に症状が固定化した日。この「認定日」の状態で障害年金の対象かどうか、医師の「診断書」と本人や家族ら作成の「病歴・就労等申立書」で書面審査される。
特例もある。手足の切断、喉頭全摘出、心臓ペースメーカー装着、在宅酸素療法の開始などは当日から、腎臓病の人工透析は3カ月、大腸がんの人工肛門の造営は6カ月経過後など。
がん患者で受給の可能性を知っていたのは66%程度(キャンサーネットジャパン2023年調査)。障害年金を新たに受けた総数中でがん患者は推定1~2%程度(19年障害別支給決定数等)。
なぜ周知度も適用も広がらないのか。
年金制度は高齢者向けとの認識が根強い。しかし、障害年金は原則20~65歳未満の人が請求できる。うつ病、統合失調症、広汎性発達障害など精神障害にも幅広く対処する。
障害者手帳を持つ人しか障害年金は受けられないとの誤解もある。手帳の有無ではなく、年金法の「障害認定基準」をもとに審査・判断される。
そんなルールや知識を知らない傾向が医師の間にも強い。医師が「診断書」の作成を渋る、作成方法を知らないなどの事例がよく指摘される。
書類の依頼や作成に手間取る。制度に詳しい社会保険労務士や社会福祉士らの手助けがほしい。
もちろん年金制度としての条件はある。「初診日」前日で一定の保険料納付条件を満たすこと。初診日に「国民年金」加入者は障害基礎年金の対象、「厚生年金」の加入者は障害厚生年金の対象にされる。
障害基礎年金は1級月約8万8000円、2級約7万円、こどもがいる場合は加算される。障害厚生年金1、2級は基礎年金に保険料納付に見合う報酬比例が上乗せされる(3級は報酬比例のみ)、配偶者への加算もある。
さらに認定までの期間は最長5年分さかのぼって年金が一括支給される。数百万円の生活資金を得て、経済的に救われる人々も多い。
難病との闘いは生活との戦いだ。障害年金という強い味方をもっと生かせる制度と環境の改良・活用を進めたい。
みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職

