〈論説〉障害者雇用の現場 この無法・暴利を断て

2026年0701 福祉新聞編集部

 7月から障害者の法定雇用率が改定される。対象の職場は常用労働者40人以上から37・5人以上へ拡大、雇用率は2・5%から2・7%へ引き上げられる(国や自治体などは3%)。

 雇用数は過去最高(民間で約70万人)だが、なお半数強の企業は達成できていない。未達成企業は納付金の支払い(常用100人超で不足1人月額5万円)や企業名の公表を避けたい。

 そこで職場・仕事・支援員をそろえて提供する「貸しオフィス」「貸し農園」などの代行ビジネスがはやる。

 4月には、大阪市を中心に総額150億円もの不正が発覚した。悪用されたのは、「就労継続支援A型」(利用者約8万人)。

 障害者は事業者と雇用契約を結び、最低賃金を保障される。事業者には訓練等給付費(支援員の人件費や事務所経費)が補助され、障害者は訓練を積み重ね、一般就労へ歩む。

 絆ホールディングス傘下の4事業所は、グループ内のA型利用者をグループ内企業に一般就労させた。6カ月以上の「就労定着者」になって加算金(成功報酬)を得ると、A型に戻したうえ、また別企業へ一般就労させ、補助金や加算金を得た。この〝たらい回し〟は2年余も続いた。

 A型でも一般就労でも動画を見るような自己学習がほとんどだった、という。

 大阪市は指定を取り消し、約111億円の返還を請求、詐欺容疑で告発した。京都、奈良、埼玉などでの不正を含め総額150億円超とみられる。

 なぜ、こんな無法が長期間まかり通ったのか。厚生労働省は2年前、加算金対象の就労定着者の再申請は3年間できないルールを定めたが、機能しなかった。今回は、就労定着者の年間人数を事業所の定員内にとどめる歯止めも定めた。

 しかし、内部や外部の通報・告発を広く受け止め、早期に是正する行政の厳格な方針・実行がなければ効果はない。75市町村に及ぶ不正の広域化に対し、データ上で不正を早期発見、波及を阻止する全国横断的な点検態勢も不可欠だ。

 「就労継続支援B型の事業所」(利用者約38万人)も急増する。公費補助を受け、障害者の軽度作業に月2万円前後の「工賃」を払う。この福祉的就労でも、観葉植物の鉢やメダカの水槽を自宅に届け、世話をさせるだけの補助金狙いが報道される。

 B型のように乱立気味の分野では今年度から新規開業の報酬が下げられる。

 悪質な事業所を解散に追い込むと、障害者は働く場を一時失い、親族も困る。福祉行政はその矛盾に悩むが、障害者の意欲や誇りを奪う非道や荒稼ぎに手をこまねいてはなるまい。

 障害者を誠実に支える多くの職場・職員は不祥事の多発にいたたまれない。

 悪貨が良貨を駆逐する悪循環を早急に断ちたい。

みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職

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