職員の腰痛予防に「介護リフト欠かせない」(特養ホーム杏樹苑、埼玉)
2024年12月19日 福祉新聞編集部社会福祉法人杏樹会(大久保秀男理事長、埼玉県入間市)が運営する特別養護老人ホーム「杏樹苑」では、介護リフトが欠かせないものとなっている。導入から4年が経過し、職員の腰痛軽減、利用者に対するサービスの質向上に効果を発揮しているが、定着までには時間がかかった。現場の職員に聞いた。
杏樹苑は同法人が運営する3カ所の特養のうち、最も古い1999年4月に開設。従来型多床室・定員62人で、要介護度の高い利用者が多い。介護リフトは、併設する特養「杏樹苑滔々館」と合わせて5台導入されている。
脳卒中やパーキンソン病などで拘縮こうしゅく(関節の動きが制限された状態)が進んだ利用者や、体格の大きい利用者をベッドから車いすに移乗する際など、複数の職員が支援する場面で特に効果を発揮しているという。
介護リフト導入前について、新井千香施設サービス部長は「利用者によっては、移乗に3人の職員で対応することもあった」と話す。 さらに「人の手による利用者の支援が当たり前だったので、リフトを使うという発想がなかった」と新井部長は当時を振り返った。
縁遠かった介護リフトだが、2015年4月に開設した特養「爽風館」に導入され、20年3月には杏樹苑にも導入された。
導入を後押ししたのは利用者の反応だ。機械による支援に「(職員を)信用しているから大丈夫」と前向きな利用者が多く、「(人力での支援は)気恥ずかしいし、申し訳ない」と言う利用者もいた。
使い方の研修を受けるまで効果に懐疑的だったという新井部長も、「人力での支援に比べ時間もかからず、何より腰痛に悩むことがなくなった」。使用する職員が増え、徐々に介護リフトに対する信頼度が高まり定着した。
現在は小回りが利くモリトーの「つるべーY6セット」を主に使用している。フロアごとに1台ずつある介護リフトを効率的に使用するため、一斉ケアから個別ケアに変更。サービスの質向上にも効果をもたらした。
人手不足のカバーについては「職員を大事にする、職場環境改善という意味では離職防止に影響があるかもしれない」と新井部長。1台数十万円と決して安くない買い物だけに「補助金の充実などが必要」と話した。
杏樹会 1998年1月法人設立。職員は常勤介護士17人、非常勤介護士11人など。入間市を中心に、特養、デイサービス、保育所を展開している。