〈社会福祉ヒーローズ〉障害者の雇用拡大 「できるかも」を「できる」に

2024年0319 福祉新聞編集部
利用者の相談に応じる丹羽さん(左)

社会福祉法人暁雲福祉会
障害福祉サービス事業所「ウィンド」(多機能型)・大分市
副施設長 丹羽信誠さん(39)

 

寺と社会福祉法人を営む家に生まれた丹羽さん。いずれ家業を継ぐのかな、と思いながら育ち、大学卒業後に帰郷すると、特例子会社「キヤノンウィンド」への出向を命じられた。知的障害者が働き続けられるよう現場で支援することになった。

 

最初はバッテリーの詰め替えと保証書の計数作業をしていた。社員が増えるにつれて仕事量も増やさないといけなくなり、新規作業の創出や職域の拡大が求められるようになった。

 

企業担当者から新規作業が次々と提案されたが、障害特性を十分に理解できていないまま提案される作業が知的障害のある社員に合うのか不安があった。新規作業を導入したい意見と、社員に過度な負担をかけたくないという意見がぶつかった。

 

半年以上作業が遅れてしまい、これは良くないと思い、努力を重ねて少しずつ理解が進むにつれて協働して取り組むようになった。

 

社員一人ひとりの作業を分解して「スキルマップ」を作成。各社員の得意・苦手が作業別に一目瞭然で分かり、全体の作業量も把握できるようになった。また、品質を保ちながら製品を作れるように障害特性に配慮した「治工具」の開発も協働で進めた。

 

努力が実り、最初2種類だった作業は60種類まで拡大。何よりカメラ本体の外観や内部のパーツまで携われるようになり、社員が自信を持てるようになった。

 

仕事に投げやりになる利用者がいた。厳しく向き合うこともあり、嫌われていると思っていた。だが、入社式の朝「今までいろんなことを教えてくれてありがとう」と、ふいをつかれて涙が出た。思いがしっかりと伝わっていたのだ。

 

社会福祉は人と向き合う仕事。労力を惜しまず取り組んだ結果、悲しいときや残念なときもあるが、「ありがとう」の一言ですべてが報われるときもある。

 

キヤノンウィンドで協働することを学んだ。一つのテーマに対して知見を持ち合って解決していく大きな力が生まれる。協働によって生き生き働く社員。彼らは立派な労働者であり、一人ひとりに大きな可能性がある。「できるかもしれない」を「できる」にしたい。挑戦はこれからも続く。