福祉避難所開設ゲーム 熊本地震きっかけに開発〈リデルライトホーム・熊本〉
2025年05月29日 福祉新聞編集部
熊本県の社会福祉法人リデルライトホーム(小笠原嘉祐理事長)は、福祉避難所の立ち上げについて学ぶゲーム「SGSE」(スグセ)を開発した。複数の法人と一緒に災害時に一般避難所では過ごしにくい高齢者や障害者らの受け入れをシミュレーションできる。
参加者はテーブルに、電気などインフラ一覧が記載された事業継続資源シートと、災害時に使用するものが記載された災害備蓄品シートを準備。実際に自法人が持つ資源や備蓄品のカードをシートに配置する。
ゲームでは最初に各プレーヤーが被災状況カードを引き、被害の大きさに応じてそれぞれのインフラカードを没収。その上で参加者同士で話し合いながら、テーブルの中央に1枚置かれた福祉避難所資源シートに、自法人が待つ資源を出していく。
一方、インフラカードを福祉避難所に出したり、災害対策本部を担ったりすると「地域貢献メーター」が増える。そうして福祉避難所が開設できるとゲーム終了。最終的にメーターが20ポイントを超えると高評価だという。
ゲームを作ったきっかけは2018年の熊本地震だ。同法人はすぐに福祉避難所を立ち上げて地域の高齢者の受け入れを行った。しかし、当時熊本県内で自治体と災害協定を結んでいた福祉施設のうち、実際に開設したのは2割だったという。
開発した同法人の木村准治事務長は「大災害時は職員も被災するなど不確定要素が多い。事前に他法人との連携を話し合うことが重要だ」と語る。
2024年からは介護施設はサービス事業者の事業継続計画(BCP)の策定や研修が義務付けられた。そのため全国から問い合わせがあったという。
その際、同法人は熊本地震を経験した介護職員をゲームのファシリテーターとして派遣しており、これまで30カ所以上で研修を行った。熊本では、社会福祉法人経営青年会の研修や、熊本学園大の授業でも実施した。
木村事務長は「災害時の福祉避難所の運営は、社会福祉法人にとって大切な地域貢献。実際の被災経験を話すことで、どの地域でも福祉避難所ができるよう広めたい」と話している。