〈論説〉社会保障制度の機能 なぜ「一億総中流」か

2026年0726 福祉新聞編集部

 物価の高騰に悲鳴が上がる中、内閣府「国民生活に関する世論調査」2025年では、「中流」との回答が9割を維持した。

 「世間一般から見た自身の家庭の生活程度」は「中の中」46.8%で最多、「中の下」27.3%、「中の上」15.4%で計89.5%。

 富裕層の「上」は1.4%のみ。貧困層の「下」は7.8%にとどまる。非正規労働者らも目立つ20~30代もほぼ同じ程度、50代以上で9%台とやや高い。

 1970年代に「中流」は9割に達し、総人口1億人、GDP(国内総生産)世界第2位を背景に79年の「国民生活白書」は、「一億総中流」の定着を誇った。

 半世紀の激動にもまれながら自称「中流」意識は、なぜ揺るぎないのか。
 厚生労働省の所得再分配調査2025年の「ジニ係数」が教えてくれる(所得格差は0に近いほど小さく、1に近いほど大きい)。

 社会保険料や税の負担と給付以前の当初所得では0.5855と過去最大になった。収入の乏しい高齢者の増加を主因に格差はじりじり拡大しつつある。

 一方、当初所得から社会保険料・税を差し引き、社会保障の給付を加えた再分配所得後のジニ係数は0.3825と格差を埋め、近年横ばいで推移する。

 社会保障の給付による効果が大きく、税制の貢献度は弱いと分析された。

 世帯の類型別でみると、高齢世帯は再分配の効果が大きく、年金・医療・介護で老後を支えられる姿を反映する。若い世代も保育・児童手当などの支援を得るが、特に母子世帯への支えの弱さがうかがえた。

 社会保障の諸制度が「中流」意識を守り、「中流」世帯は社会保障を頼る。

 厚労省「社会保障に関する意識調査」22年では、「社会保障の給付水準を維持、少子高齢化による負担増はやむを得ない」との回答が32.7%で最多、「給付水準を引き上げ、そのための負担増もやむを得ない」も16.9%。

 「給付水準を大幅に引き下げ、負担を減らす」は、わずか5.6%。

 二木立日本福祉大名誉教授は、社会保障に関する6種類の調査を精査し、『一番特徴的だったのは、給付も負担も現在より減らす、との回答が全調査で約1~2割にとどまったこと』と総括した(「ファクトで展望する高齢日本の医療政策」勁草書房、対象は前述の厚労省、内閣府・国際比較調査、長寿社会開発センター、日本医療政策機構などの各調査)。

 「政治」が納得できる社会保障の改革・改良を提案すれば、国民の多くは応分の負担に応じるのではないか。そんな可能性に、なぜ踏み込めないのか。

 政府・与党は代替財源の確保策なしに社会保障財源の消費税引き下げ(食料品)に走る。物価対策は急務だが、「中流」を守る仕組みを弱体化したら元も子もない。 

 

みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職

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