【関西学院大・中】実践的な社会福祉教育

2026年0414 福祉新聞編集部

2026関西学院大学における本格的な社会事業、社会福祉教育が始まったのは、1948(昭和23)年に新制大学となり52年に文学部社会事業学科が新設されて以降である。
竹内愛二(1895~1980)は48年に今田恵教授(1894~1970)の推薦により関西学院文学部の嘱託講師となった。49年に専任講師となり、52年に教授に昇任し社会事業学科は実現した。その学科新設財源に、兵庫県共同募金からの30万円の配分金が含まれていることは共同募金活動に熱心であった竹内の大きな功績である。

竹内愛二教授

当初の教員は、竹内のほか、杉原方(たもつ)助教授、丹治義郎助手、今井鎮雄(1920~2014)と岡村重夫(1906~2001)の2人の非常勤講師で構成され、54年に坂本津矢子が専任講師として着任した。

ソーシャルワークに軸足
竹内は、京都市生まれ。29年にアメリカに留学。オベリン大学大学院修了(M・Aの学位取得)。アメリカ滞在中に各種のフィールドワークに積極的に参加した。
帰国後は同志社大学法文学部の専任講師となり、その後教授となるも、46年に辞任。その理由は、竹内がソーシャルワークに軸足を置いた研究と教育を重視したことによる。社会福祉で働く職員の実践力が不十分であれば、社会福祉の発展はないと考えたからである。
29年に同志社から関学に移っていた中島重(1888~1946)は、31年に「社会的基督教徒関西聯盟(れんめい)」を創設し、竹内は神戸地区の中央委員に選ばれている。
中島は44年に関西学院を辞職、病床に伏し、46年に死去した。竹内は中島の遺志をついで委員長となり、聯盟は社会基督教全国聯盟と名称も新たに、軍国主義的思想の排除、各国民相互の共同による国際平和の維持増進、世界連邦の実現をかかげて運動を再開した。

中島重教授

また、一般的にはケースワークの竹内と理解されがちであるが、コミュニティー・オーガニゼーション(地域組織化活動)、コミュニティー・ディベロップメント(地域社会開発)の研究や実践にも非常に熱心であった。
そうしたことから、兵庫県における共同募金会の活動に加えて社会福祉協議会の仕事にも積極的に関わった。
同時に学会活動にも熱心で、日本社会福祉学会代表理事や日本キリスト教社会福祉学会の会長、日本ソーシャルワーカー協会の会長などを歴任している。

身体障害児キャンプ
関学の社会事業・社会福祉教育が極めて実践的な伝統がある事実の一つとして、余島(香川県小豆島)にある神戸YMCAのキャンプサイトで実施された日本初の身体障害児キャンプへの参加がある。
このキャンプは、53年から本格化した。キャンプ長となったのは、神戸YMCA主事で非常勤講師の今井鎮雄である。当時21歳の武田建(名誉教授)も、学生リーダーとして参加している。キャンプは、パーソナリティーを伸ばす教育的プログラムを組み込んだ2週間の長期少年キャンプと、身体障害児のキャンプで10年間にわたって毎年実施された。
余島のキャンプでは、毎年社会事業学科のフレッシュマンキャンプも行われ、竹内教授をはじめ教員、大学院生、学部生の多くも参加した。これにより、新入生も多くの教員や先輩と交流し関学独特の重層的な雰囲気をつくってきた。そうした中で下級生が上級生や院生、そして教員の論文を手分けして清書することも少なくなかった。
これが下級生にとっては、非常に勉強になった。また、院生の研究発表会やOB・OG会も、関学の伝統となった。

社会学部新設
60年には学院の方針により社会学部が創設され、文学部から社会学科と社会事業学科が移行した。
社会学部は社会学科のみの一学科制で、理論社会学、社会福祉、マスコミ、産業社会学の4コースが設けられた。それにより52年以来の社会事業学科は消滅した。
その後、社会学部の中に社会福祉学科ができたのは99年のことである。
しかし、その間もソーシャルワークを中心とした幅広い研究と教育は武田建らによってしっかりと展開されていた。
武田は82年に社会学部長、85年に学長、92年に理事長となり学院全体の振興に大きく寄与した。関学のアメリカンフットボールの黄金時代を築いたことでも有名である。

人間福祉学部と三つのC
社会福祉学科は2008年に社会学部を出て、3学科構成(社会福祉学科、社会起業学科、人間科学科)の人間福祉学部と大学院人間福祉研究科前期課程・後期課程を設立し現在に至っている。

武田健名誉教授

14の学部と研究科を擁する総合大学で、社会福祉の独立した学部と研究科があるのは関学の大きな特徴だ。学部と研究科の専任教員は、40人近い大所帯になっている。
実習は、3学科がそれぞれ特徴的な展開をしている。ソーシャルワーク実習(社会福祉学科)、国内・海外でのインターンシップ(社会起業学科)、人間科学フィールドワーク(人間科学科)などである。
このように3学科はそれぞれに特徴を持っていると同時に、相互協力により高度な学際的教育(3学科共通の30科目やフィールドスタディーなど)を展開している。また第二外語に日本手話を開講しているのも特徴の一つだ。
関学の社会事業・社会福祉教育では創設者である竹内や後を継いだ武田建によりグローバルな視野を持った教育に力を入れている。現在の武田丈じょう人間福祉学部長も、多文化共生や多文化共創、国際ソーシャルワークに積極的に取り組んでいる一人である。
人間福祉学部では、三つのCを実践教育の中核としている。Comprehensiveness、Competence、Compassionの三つのC。つまり、グローバルに考え創造的に行動する力、高度な問題解決とマネジメントを行う能力、豊かな情操と人道的素地をもって福祉に取り組む能力である。
この三つのCは人間福祉学部だけのものではなく、関西学院のスクールモットー〈Mastery for Service〉の実践の基盤となる。

(小國英夫)

 

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