強度行動障害の新施設 地域防災拠点も目指す〈菊愛会・熊本〉
2025年06月19日 福祉新聞編集部
熊本県の社会福祉法人菊愛会(最上太一郎理事長)は6月、強度行動障害者の入所施設などを一体的に整備する「サポートセンターわらび」を開設した。部屋と部屋の間に汚物処理室を設置するなど感染症対策を強化したのが特徴。災害時に地域の障害者らを受け入れる交流スペースも完備し、地域防災の拠点を目指す。
わらびは木造2階建てで、延べ床面積は2027平方メートル。1階には2ユニットのほか、活動室や厨房を整備。2階には4ユニットを配置した。1部屋当たりの広さは14平方メートル。
施設入所支援(定員32人)や短期入所支援(3人)のほか、日中一時支援などを行う。また別棟にさまざまな活動で使える地域交流ホームを設けた。
総工費は8億5000万円に上る。このうち借り入れを含む自己資金が5億4710万円、補助金が3億290万円だった。
最大の特徴は、インフルエンザなど感染症が発生した際に、施設でのまん延を防ぐ構造になっている点だ。
隣り合う2部屋の間にシャワー室を配置。普段は鍵をかけているが、利用者が感染症にかかった際は、この部屋で食器や汚物などを処理する。ベランダに直接出られる扉もあるため、廊下を通らなくて済むという。
さらに全居室に洗面所を設置。部屋には寝室と居室を仕切るドアもついている。
人のためにやる
「ずっと普通に暮らすとはどういうものかを考えてきた」
5月17日に菊池市の文化会館で開かれた落成記念式典。最上理事長はこう話すと、感極まって涙した。
建て替え前のわらびは同法人が43年前に建設した精神薄弱者入所更生施設。当時の国の基準で鉄筋コンクリートの建物だったが、最上理事長は疑問を感じていたという。譲り受けたログハウスを施設として申請し、県から却下されたこともある。そうした思いから、わらびの床や壁、ドアは統一した色味の木材を使用。ぬくもりを感じられる空間にした。
別棟として交流スペースとカフェも設けた。熊本地震の経験を踏まえ、災害時に地域で暮らす障害者らの受け入れも想定しているという。
式典で最上理事長は「福祉制度をやるのではなく、人のためにやるというのが創設の思いだ。地域の拠点となるよう努力したい」と意気込みを語った。
会場には、坂本哲志自民党国会対策委員長や馬場成志総務副大臣、こども家庭庁の源河真規子審議官らも訪れた。馬場副大臣は「これからも日本の福祉をリードしてほしい」とエールを送った。
菊愛会 先代の最上次男氏が障害のあるわが子のために1981年に設立。現在、児童発達支援センターやグループホーム、養護老人ホームなど40事業を運営している。中でも放課後等デイサービスは全国に先駆けて開始し、その後の制度化につながった。職員は240人。