高齢施設と介護未経験者をマッチング 今年度から厚労省がモデル事業を創設
2025年04月19日 福祉新聞編集部
厚生労働省は今年度から、介護現場と有償ボランティアのマッチング機能を強化するモデル事業を開始する。民間事業者のサービスを活用し、介護未経験者が介護の周辺業務を短時間で行える仕組みを促進。これまで介護と関わりのなかった層との接点を増やし、介護人材の裾野を広げたい考えだ。
介護未経験者等マッチング機能強化モデル事業は、都道府県や市町村といった自治体が実施主体。総額で7800万円の予算を計上しており、自治体の応募状況などによって補助額を決める。補助金は、民間事業者によるマッチングサービスの導入経費や会議の開催経費などに使える。
特別養護老人ホームやデイサービスなど介護事業者は、ウェブやアプリなどのサービスを通じ、シーツ交換や清掃、レクリエーションといった業務の内容や時間、金額を提示する。それを見た人が応募するとマッチングが成立する仕組みだ。
厚労省がこうしたモデル事業を立ち上げる背景の一つには、介護人材不足の加速がある。
厚労省によると、2040年度に必要な介護職員は272万人で、今後約60万人必要となる。にもかかわらず、23年度の介護職員数は212万6000人で、22年度より約3万人減少。介護保険制度が開始した00年度以来、初めて減少に転じる事態に陥っている。
そうした状況の中、介護現場では身体介助など専門性の高い業務と、周辺業務を切り分ける傾向が強まる。
福祉医療機構(WAM)の調査によると、24年度に特養でシーツ交換や清掃などを担当する介護助手を導入している割合は66%。導入は増加傾向にあり、2年前と比べ7ポイント増となっている。
厚労省社会・援護局福祉人材確保対策室は「年齢や性別を問わず、これまで介護に関わりのなかった人が介護現場と接点を持つことで、介護職の裾野を広げるきっかけになれば」と話す。その上で「介護事業者が地域の大学や老人クラブなど、さまざまな団体とつながるなど、地域とのつながりが生まれる可能性もあり、相乗効果も生まれるのでは」と期待を寄せている。
先行する自治体も
厚労省が今年度から始める介護未経験者等マッチング機能強化モデル事業は、すでに取り組みを一部先行して実施している自治体もある。
埼玉県川口市は2024年度から、有償ボランティアのマッチングサービスを運営するプラスロボ(鈴木亮平代表)と協定を締結。新規登録者は450人に上り、うち8割が未経験者だという。
同市は事業開始にあたり、市役所や公共施設、街中、電車などで広告を展開。介護認定を受けていない65~74歳の5万人にチラシを送付するなど大々的な広報を実施した。
プラスロボはマッチングサービスを提供するだけでなく、高校や大学で説明会を開催し参加を呼び掛けた。また、介護事業者向けには業務の切り出しサポートもする。
現在、プラスロボはこうした事業を17自治体で展開している。川崎市では市社協の福祉人材センターと連携を強化。仙台市では1カ月で500件の応募があるなど反響も大きいという。
鈴木代表は「介護施設の中には3カ月先まで有償ボランティアが埋まっているケースもある。仮にそのまま就職しても事業者に手数料などは掛からないため、導入のメリットは大きいのではないか」と話す。
1自治体当たりの負担は約400万円程度だという。