中山間地域での特例を 40年に向けたサービス提供体制のあり方検討会(厚労省)
2025年03月08日 福祉新聞編集部
「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(座長=野口晴子早稲田大教授)が3日に開かれ、厚生労働省はこれまでの議論を踏まえた検討の方向性を示した。委員からは特に、今後サービス需要が減る中山間地域(過疎)で、特例や基準の緩和を求める声などが相次いだ。
高齢化に伴う介護サービス需要がピークとなる40年に向けて厚労省はこれまで、需要の変化に応じて全国を「中山間地域」「大都市部」「一般市」の3地域に分けて、サービス提供体制を検討する方針を示していた。
今回厚労省が示した案は、サービス需要が減る中山間地域について、計画的にサービス基盤を確保することが必要だと指摘。地域の介護事業所がサービスを効率的に提供できる方策や、介護事業者間の連携と業務の効率化などを提案した。
一方、サービス需要が急増する都市部には、AI(人工知能)技術など民間の力も活用したサービス基盤が必要だと説明。時間軸に応じて地域の状況をエリア別に見える化し、関係者間で分析する必要性について触れている。
全国老人福祉施設協議会の大山知子会長は、中山間地域では行政が介入して介護サービス量の調整をしてほしいと要望。参入と撤退を事業者に任せればサービス過剰の地域と空白地帯が極端に生じると訴え、職員配置基準や介護報酬に特例を設けるよう訴えた。
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、介護老人保健施設が訪問リハビリテーションを行う際の「みなし指定」を他分野にも広げるよう提案した。「特別養護老人ホームが訪問介護、老健施設が訪問看護をできれば、今ある社会資源を有効活用できる」と語った。
また、やさしい手の香取幹社長は、今後介護人材が増えない中で、どうサービスを提供するかという観点が必要だと強調。法人内外の複数事業所で1人の人材を共有する制度の整備を求めた。
このほか、委員からは施設整備に関する意見も出た。
全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長は、建築資材の高騰により施設が建設できない状況にあることを説明し「特に都心部では質を担保しながら、部屋の広さや廊下幅などの要件を緩和してほしい」と述べた。
大山会長は、施設を別事業に転用する際、残存年数に応じてもらった補助金を返還しなければならない制度を問題視。既存の資源を最大限活用する際にネックになるとの認識を示した。