養護ホーム措置で自治体の負担増えない 誤解払拭して運営費増を
2025年02月25日 福祉新聞編集部
自治体が環境上や経済的理由により自宅で暮らせないと判断した高齢者を受け入れる養護老人ホーム。その運営費(措置費)の財源は2006年の三位一体改革で国庫補助から地方交付税に移譲し、各自治体が適正な水準に改定することになったが、制度の複雑さや誤認識もあり、ほとんど改定されてこなかった。しかし、昨年国が通知を出したことで改定する自治体が増え始めた。
誤認識の一つが、入所者を措置しなければ自治体が負担を抑えられること。いわゆる措置控えだ。それにより養護老人ホームは入所者が減り、運営難に陥って閉鎖するケースが増えている。
しかし、実際には措置した分、自治体の負担が増えるわけではなく、措置しないと負担が減るわけでもない。措置した分の財源は地方交付税で100%手当てされている。養護老人ホームの運営費は老人福祉法に基づく義務的経費であり、地方交付税に被措置者1人当たりの単価(算入単価)が組み込まれ、毎年度改定されている。
算入単価の推移をみると、06年度から23年度の18年間で1・38倍増えており、本来は自治体が運営費も増額改定しなければならないが、実施されてこなかった。そうした状況を踏まえ、厚生労働、総務省は通知で自治体に助言し、改定を促している。
那珂市が運営費増 1億円強の増収に
茨城県那珂市は、市内で養護老人ホームと盲養護老人ホームを運営する社会福祉法人ナザレ園から説明や要望を受け、24年度の運営費を05年度に比べて1・389倍(職員処遇改善加算含む)することを決め、12月議会で補正予算が成立した。ナザレ園の両ホームの24年度収益は定員を増やしたことで単価が減る中、前年度に比べて約1億3000万円増える見込みだ。
ナザレ園は市の決定に至るまで約1年間、協議を繰り返した。制度の複雑さゆえに、市の福祉局、財政局と見解が食い違うこともあったが、仕組みを理解して根拠を持って説明し、先﨑まっさき光市長に直接話すこともあった。菊池譲副理事長は「行政には困っている人を助ける義務がある。預け先の養護老人ホームが適正に運営できるようにすべきだ」と話す。 今後、那珂市では運営費を算入単価に連動して毎年度変えることになった。先﨑市長は「現場が置き去りにされ、閉鎖する施設もある。養護老人ホームは重要なセーフティーネットであり、可能な範囲で対応しないといけない」と話している。