知的障害受刑者の支援モデル事業が効果 長崎刑務所、再入所率が低下
2025年01月21日 福祉新聞編集部2022年6月から長崎刑務所(長崎県諫早市)で行われている知的障害のある受刑者の処遇・支援モデル事業が一定の成果を上げている。24年12月の中間報告によると、出所者の大半が帰住先を確保でき、再入所率も下がった。立ち直りの意欲が高まる可能性もみられた。法務省は今後もモデル事業を行って効果を検証し、全国展開することも検討する。
知的障害のある受刑者は24年7月末時点で全国に1543人おり、窃盗や薬物使用が大半を占める。療育手帳所持者は3割と少なく、2年以内の再入所率は26%で受刑者全体の13%より倍多い。再犯まで1年未満、入所5回以上の割合が高いことも課題となっている。
こうした状況を改善するため、モデル事業は全国で唯一、社会復帰支援部門を設置している長崎刑務所で、社会福祉法人南高愛隣会と連携して5カ年計画(22~26年度)で取り組んでいる。
個々の特性を踏まえた支援計画を作成して指導し、刑務作業ができるようモデル事業対象者が練習する工場もある。対人関係のスキルを学び、南高愛隣会が取り組む和太鼓を通じて協調性も養う。手帳の取得に向けた調整を行い、出所後の福祉サービスにつなぎ、就労支援なども行う。
モデル事業対象者は24年11月末時点で累計65人(平均48・1歳)。出所したのは29人で、そのうち96%(27人)が帰住先を確保でき、再入所率は18%(5人)だった。
対象者34人に対する定期的な個別面接の結果では、自己肯定感が上がり、立ち直りに向けた意欲が向上する可能性もみられた。悩みごとを相談できるようになったという声も聞かれた。