〈社会福祉ヒーローズ〉優しく温かい居場所づくり

2024年0415 福祉新聞編集部
2周年を記念するライブが行われたBASE298(右から2人目が高橋さん)

社会福祉法人立川市社会福祉協議会・東京都

地域福祉コーディネーター

高橋美季さん(26)

 

高橋さんが地域福祉に興味を持ったのは、大学生の時に参加したフィールドワークがきっかけ。調査に行った高齢化率50%を超える限界集落では不便な生活をしているだろうと思ったが、全く違った。みんなができることをして支え合いながら幸せに暮らしていた。自分は住んでいる地域のことを考えたことがなかったが、考える人が増えれば、より良い地域にできるのではないかと思い、社会福祉協議会の仕事を選んだ。

 

入職して3年目に居場所づくりを任された。地域住民と半年以上話し合いを重ね、みんなでつくっていく自由でおしゃれな場所とし、ボランティアは「キャスト」と呼ぶことにした。精肉店の跡地だったことから名称は「BASE298(にくや)」となった。

 

2021年に開設してから、地域住民が主体的に集まり、最初は週3日のオープンだったが、週5日になった。BASE298は高齢化が進んだ団地にあり、高齢者の利用が多かったため、こどもや親子連れにも利用してもらおうと、大学生のボランティアとこどもが過ごせる居場所もつくった。美大生がギャラリーとして使ったり、団地のフリーマーケットに参加したり、つながりがつながりをつくり、輪が広がっている。

 

社会福祉士資格を持つ地域福祉コーディネーターとして、福祉的な関わりを心掛けている。例えば、うつむきがちだったシングルマザーのAさん。声を掛けると家計が苦しいことが分かり、フードバンクやひとり親家庭の支援団体を紹介した。また、コロナ禍で趣味の活動や友人との交流が減ってしまった80代女性には、孤独感を抱えないようにキャストをお願いした。週1回活動してくれて、今では彼女と話すのを楽しみに来る利用者もいる。

 

高齢化や核家族化、人口減少が進み、地域共生社会の実現が求められている。共生とは何か――。その答えがBASE298にある。自由と緩さのあるみんなの居場所で、できることをしながら支えたり支えられたりする。フィールドワークで調査に行った地域のように、みんなが優しく温かい。ぜひBASE298に遊びに来てほしい。そして、いつか居場所づくりをする仲間になってほしい。