経験の共有進める〈厚労省 障害保健福祉部長インタビュー〉
2023年10月25日 福祉新聞編集部――来年度予算の概算要求の主要事項を教えてください。
昨年12月に成立した改正障害者総合支援法などを円滑に施行することが肝要です。
地域で暮らす障害者の重度化・高齢化に対応するため、緊急時の受け入れ機能などを持つ「地域生活支援拠点」の整備が市町村の努力義務になりました。拠点コーディネーターの配置や支援ネットワークの構築を支える予算を計上しました。
「入院者訪問支援事業」や「虐待通報への都道府県の対応」など精神保健福祉法改正の施行も重要です。
自閉症スペクトラムや知的障害の人で「強度行動障害」のある人への支援については、今年3月に検討会報告がまとまりました。これを踏まえ、現場の職員を支援する広域的支援人材を配置するなど地域で支える体制の整備も進めます。
――強度行動障害に対応する人材育成の考え方は。
専門性が高い人材を多く育てるというより、経験や知見を広く共有していくということがポイントです。強度行動障害の態様はさまざまですが、1人の職員の経験には限りがあります。生活圏域を超えて広域的に経験・知見や情報を共有し、全体としてより良い支援に結びつけていくことが狙いです。
法改正や検討会報告により、障害福祉サービスの質の向上への道筋をつけることはできましたが、具体的な内容は来年4月の障害報酬改定に向けた議論の中で検討が必要です。
――物価高への対応は。
物価高や賃金向上の影響は、障害福祉サービス事業所にとっても非常に重い負担になっています。医療、介護報酬と同様、報酬改定でしっかり対応していかなければなりません。
障害分野に特有の問題として就労継続支援事業所が障害者に支払う工賃への影響があります。工賃は生産活動収入がベースなので、材料費高騰の中で工賃を維持・向上していくには、販路拡大や価格転嫁などにより収入を確保する必要があります。
また、就労継続支援A型について言えば、全国的な最低賃金の引き上げの影響も想定されます。
これまでも就労継続支援事業での工賃や賃金の向上に向け、事業者の皆さんには熱心に取り組んでいただいてきましたが、さらに進めていただくよう環境整備に取り組んでいかなければならないと思っています。
辺見聡=1966年、群馬県出身。一橋大卒。90年4月入省。