保育士を介護福祉士に 青森の法人が人材のユーティリティー化検討

2022年1027 福祉新聞編集部
保育士から軽費老人ホーム職員に異動した小田まち子さん。昨年度、社会福祉士の受験資格も取得した

 子どもが減って保育士の働く場がなくなり、高齢者が増えているのに介護の担い手が足りなくなる――。多くの福祉現場が直面するこうした課題に対し、青森市の社会福祉法人和幸園(今村良司理事長)は法人合併、福祉人材の有効活用など柔軟な経営を展開しながら乗り越えようとしている。

 

 和幸園は1963年創設。軽費老人ホーム、保育所、特別養護老人ホーム、デイサービス、認知症グループホームなど順次事業を拡大し、現在、職員は高齢関係で261人、保育関係で59人いる。

 

 一方、市内の昨年の出生数は1463人。10年前から711人減った。転出超過も続いており、10年間で生産年齢人口は約3万3900人減少し働き手が不足しているが、高齢者数は1万5500人増えた。

 

 こうした状況に「故郷を守れなくなる」と危機感を持った今村理事長。福祉人材の不足、後継者問題などの解消に向け、81年に一度は保育所を分離してできた別法人と、2016年に再度合併した。現在はスケールメリットを生かした経営を目指しつつ、分野を超えて地域に根付く活動を充実させている。

 

 また、介護職員の確保に苦労する中、新たに「保育士のユーティリティー化」の検討も進めている。保育士が介護福祉士を取得して高齢分野で活躍してもらう。現職員なら法人への愛着や福祉への理解があることはメリットになる。

 

 具体的には保育士(取得見込み含む)が入学でき、最短1年で介護福祉士の受験資格が得られる、養成学校の福祉専攻科(県内に2校)の活用を考えている。法人の貸付金制度(資格取得後3年働けば返済免除)で学費の負担がないように支援する。

 

 懸念される保育士の反応だが、日ごろから今村理事長が今後の保育や地域福祉の状況について職員に説明しており、法人内で高齢と保育の交流や過去に異動もあったことから「ハードルは高くない」と言う。

 

 課題は福祉専攻科のカリキュラムが1日中あるために休職せざるを得ないことで、働きながら資格を取得できる方法について養成校と話を詰めている。

 

 今村理事長は「10年後、県内保育所の約半数は要らなくなる。そうなれば保育士は離職せざる得なくなる。それを踏まえ、福祉人材が活躍できる仕組みをつくらないといけない」と意欲を示している。

 

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