一時避難用に職員寮の一室提供 地域に貢献する救護施設
2022年05月12日 福祉新聞編集部救世軍自省館は、2018年に支援団体から「住む部屋がない人がいる」と相談を受けたことがきっかけで、「一時避難場所としての居室提供」を計画。助成事業開始から約2年間で14ケースに対応した。「市内には住まいに困っている人が、想定以上に多いことに気づいた」と高橋正隆副施設長は言う。改めて制度の隙間にあるニーズが確認されたことになる。
提供した居室は、法人の敷地内にある職員寮の一室(2DK)。助成金626万円は、部屋の改装費用に加え、月々の家賃や食費、光熱費の支払いのほか、衣類、タオルなどの備品とテレビ、冷蔵庫、冷暖房などの購入費に充てている。
利用期間は原則1カ月間。清瀬市民が対象で、日常生活が可能であることなどを入居条件にした。
利用者は10代から80代までの男女で、単身だけでなく家族で入居するケースもあり、長い人は2カ月半滞在することもあった。
認知症で金銭トラブルに巻き込まれた、うつ病で一時的に仕事ができなくなった、知的・精神障害があり、近隣住民と折り合いがつかなくなったなどで、アパートに住めなくなったことが利用することになった理由だ。
当人から直接の連絡があるほか、福祉事務所、民間の支援団体からの問い合わせで対応したこともあった。
自省館に来るまでは比較的安価な賃貸の集合住宅に住んでいる人がほとんどだった。滞在中に仕事をして貯金し、自ら住居を確保して退去に至るというケースが多かった。
有期雇用の人が多く、一度歯車が狂うと居住環境の維持が困難になり、一時入所事業を利用することになった。
高橋副施設長は「生活保護を申請して保護費を受給するまでの短い期間にも、住居を確保できない、家賃が払えなくなって明日住む場所がないといった人たちがいる。なんとか支援したいという思いで始めました」と説明する。
今回は居室提供のみの支援とした。救護施設運営のノウハウがあるので、必要があれば食事や金銭的な支援もするが、あえて相談、次の住居や施設へのつなぎなどソフト面は、他の支援団体に任せてネットワークを重視している。
事業の実施により、居住に関する近隣トラブルの深刻化や、住居を確保できないことによる問題発生を未然に防ぐ効果があったとみられる。
「(一時入所事業は)本業にも近く、地域との関係性をつくるという観点で、救護施設が実施することに意義があるのではないでしょうか」と、高橋副施設長は話す。家賃にかかる費用などを法人から捻出し、助成終了後も事業を継続する方針だ。
救世軍自省館=社会福祉法人救世軍社会事業団(石川一由紀理事長)が運営する救護施設。日本で唯一、アルコール依存症者のみを対象にした施設として、1977年2月に東京都清瀬市で開設した。