口元が見える「透明マスク」 聴覚障害者が手話唄で啓発

2022年0209 福祉新聞編集部
透明マスクをつけて大石さん(右)と共演する竹DSさん=竹DSさん提供

 新型コロナウイルスの感染拡大でマスク生活が長引く中、聴覚障害者らが口の動きを読み取れる「透明マスク」が浸透してきた。それを加速しようと、テーマソング「笑顔を魅せて」が2021年9月、防災をテーマとした都内の音楽祭で披露された。現在、ユーチューブでも公開されている。

 

 「マスクの下に隠れてる 夢をかなえよう」――。作詞作曲して歌を披露する全盲の大石亜矢子さんに、透明マスクを着けた聴覚障害者の竹DSさん(活動名。DSはデフ・シンガーの略)が手話唄で共演した。

 

 幼少期から徐々に聴力を失い、成人してから手話と出合った竹DSさん。音楽好きが高じて2000年ごろから手話唄(歌い手の口の動きを読んで手話で伝える)を始め、「心の唄バンド」として公演も開いてきた。

 

 都内に住み、会社勤めをしながらの活動はコロナ禍で自粛が続く。世の中に普及した不織布マスクは感染対策としては有効とされるが、相手の口の動きを見ながら手話で対話する人には障壁になってしまう。

 

 そこでひと肌脱いだのが、創業明治22年の老舗手ぬぐいメーカー東京和晒(葛飾区)の瀧澤一郎社長だ。コロナ前の防災イベントで竹DSさんと出会い、意気投合。21年1月、飛沫が喉元にだけ飛ぶ下方吸排気方式の透明マスク「ミセルンデス」(税込660円)を開発し、販売を始めた。

 

 手話通訳士、保育士など表情を見せる必要のある人に好評で1年間で1万枚近く販売。首都圏地震に備えた市民活動にも励む瀧澤社長は障害者や福祉関係者との接点が多いことを生かし、さまざまな意見を聞いて改良を重ねた。

 

 そして今年1月、曇り止め機能に優れた新製品を送り出した。それを使った竹DSさんは「曇らないので快適だ。災害時も音声での伝達だけだと困る。透明マスクで口元を見せながら手話で伝えることも広がってほしい」としている。

 

 

福祉新聞の購読はこちら