独居高齢者を通所事業に 孤独・孤立対策を推進〈救護施設慈照園・浜松市〉

2025年0609 福祉新聞編集部
通所事業で食事をする利用者(左)。ほかの利用者との交流も増えてきているという

孤独・孤立状態の人に対する支援が社会的に求められる中で、浜松市の社会福祉法人遠州仏教積善会(左右田泰丈会長)が運営している救護施設「慈照園」は、地域に住む施設利用経験のない独居高齢者を通所事業につなげるなど、地域の孤独・孤立対策に貢献している。

「道で座り込んでいる高齢者がいる。なんとかならないか」

地域住民から慈照園に連絡があったのが、孤独・孤立対策推進法が施行された2024年4月。熱中症で動けなくなっていた近所のアパートに住む70歳代の独居高齢者だった。

左右田雅子園長は「以前から、タクシーを呼んでほしいと頼んできたり、携帯電話の使い方を尋ねてきたりと接点はあったが、施設利用者ではなかったため深い関わりはなかった」と説明する。

話を聞いてみると、生活保護受給者で要介護認定を受けており、金銭管理や食事など自身の生活がままならないにもかかわらず、介護保険事業を受けることを拒否していることが分かった。

そこで、慈照園に通所しながら昼食1食400円で食事することを提案。それまでに何度か頼ってきた経験があったからか、すんなりと受け入れたという。最初に連絡があってから翌月には、福祉事務所に通所事業として認められた。

その後、「当園が声を掛け、本人、生活保護ケースワーカー、地域包括支援センター相談員、市社会福祉協議会コミュニティーソーシャルワーカー、民生委員と数回支援会議を開いた。ヘルパーによる買い物支援や、社協の日常生活支援事業による金銭管理などの利用で、生活が安定した」と左右田園長は胸をなで下ろした。

話はこれにとどまらない。この事例が福祉関係者の間で広まり、民生委員から相談があり、生活に不安がある50歳代の独居男性に対して居宅訪問で相談支援を行うようになった。

左右田園長は今回の事例を受けて「福祉関係者も救護施設がどのようなことに取り組んでいるのか、ぼんやりとした知識だったと思う。周囲に知ってもらうきっかけになったのではないか」と分析する。

静岡県では、「ふじのくに孤独・孤立対策プラットフォーム」を早くから立ち上げ、研修や先進事例の共有などを行っているが、具体的な事例が多くないのが実情だ。

左右田園長は「生活保護は他法優先の制度なので、介護保険や障害福祉サービスで補えない場合に、頼ってもらえるような施設でありたい」と話した。


遠州仏教積善会 1912年3月、静岡監獄浜松分監長から刑務所出所者の保護について寺院と篤志家に委託があり、「遠州保護会」として設立したのが始まり。93年3月まで更生施設として役割を果たした後、同年4月から救護施設として事業を開始し、現在に至る。

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