生活保護費減額違法判決 再改定し差額支給 単身世帯は10万円

2025年1202 福祉新聞編集部

厚生労働省は11月21日、生活保護費の2013~15年の引き下げを違法とした最高裁判決への対応策を決めた。物価下落率(4・78%)に基づいて引き下げが違法とされた13年改定の代わりに、保護基準を2・49%引き下げて、その差額を追加支給する。

13年にさかのぼって改定をやり直す。13年改定前の基準に戻すだけだと、当時の一般低所得者の消費水準より高い保護基準になるとみて引き下げる。

追加支給するが、その額を値引きする格好だ。対象は約300万世帯で、単身世帯の場合、追加支給は約10万円。地方負担を含め約2000億円の財政規模になる。

原告には特別給付

約700人に上る原告も再改定の対象だが、原告には値引き分を全額国費の特別給付として支給する。その根拠は生活保護法ではなく、厚生労働大臣の裁量だ。

こうした複雑な追加支給策をとる背景には、原告と原告以外の受給者で適用する基準を分けることが「無差別平等の原理」に反するという問題がある。

また、13年改定の取り消しを命じた判決の効力を踏まえれば、再度の引き下げは原告にとって紛争の蒸し返しに当たる。再提訴にも発展しかねない。

この二つの問題をクリアするため、厚労省は原告も含めて保護基準を再改定しつつ、原告には値引き分を特別給付で埋め合わせるという方針を固めた。

ただ、これで一件落着になるかは不明だ。一般低所得者との均衡を図る「ゆがみ調整」は判決で違法とされなかったため、厚労省は再度行う。原告側はこれも保護費減額になるとみて反発している。

前例のない支給事務に当たる自治体の負担・不安も大きい。特に原告への特別給付は法的根拠のあいまいな裁量による給付で、支給事務を国と自治体のどちらが担うか、厚労省は明言しない。追加支給が始まる時期についても厚労省は「速やかに」とするにとどめる。原告側の弁護団は「撤回を求めて断固として闘い続ける」としている。

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