精神科の入院、強度行動障害は対象外 厚労省「訪問看護で対応」
2025年09月15日 福祉新聞編集部
厚生労働省は8日、精神科病院での入院について、強度行動障害の人など治療効果の見込めない人を将来的には対象外とする考えを「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」(座長=田辺国昭東京大大学院教授)に示した。
精神科病床が今後減ることを想定し、入院は急性期の患者か、急性期を越えても早期退院を目指す患者を中心とする。強度行動障害の人など慢性期に当たる患者の入院については「障害福祉や介護保険のサービスによって地域や施設の対応力を高めることにより適正化していく」とした。
また、地域の医療と福祉の組み合わせで強度行動障害の人を支える拠点として、機能を強化した訪問看護事業所を創設する考えだ。
入院医療中心から脱却するための論点の一つとして「地域で拠点となる精神科訪問看護事業所」を挙げた。
そこに求める役割としては(1)24時間対応(2)措置入院からの退院者を対象とする(3)医療機関や障害福祉事業所と定期カンファレンスを行う(4)障害福祉や介護保険の短期入所と連携する(5)身体合併症のある人の受診支援を行う――を想定する。
この構想に委員間で大きな異論はないが、ケアの中身として医療の色が強くなりすぎることへの懸念は複数上がった。強度行動障害の人に対し、服薬で行動を抑えることはかねて問題視されてきた。
こうした訪問看護事業所が対象とする利用者像として、依存症、摂食障害、自殺企図のある人、引きこもりの人が該当するとの意見も上がった。
強度行動障害とは、知的障害や自閉症の人の一部にみられる自傷、こだわり、睡眠の乱れ、異食といった行動により、特別な配慮が必要な状態を指す。所定の判定基準に基づき24点中10点を超える人が該当する。
国内には推計で8000人いるとされてきたが、22年10月の障害福祉サービスの利用実績から算出すると、延べ人数で約8万人(児童を含む)。障害者支援施設での受け入れを拒まれ、精神科病院に入院する人もいる。