支援拠点としての保育所へ〈こども家庭庁 成育局長インタビュー〉
2023年10月20日 福祉新聞編集部――少子化社会における保育施設の役割は。
保育所、こども園は保育士をはじめとする専門職を擁する重要な社会資源です。就労家庭だけでなく、すべての子育て家庭とこどもの育ちを支えていただくことを期待します。かかりつけ相談機関や検討中の「こども誰でも通園制度(仮称)」を通じ多機能化を推進します。
――これからの保育施策は。
こども誰でも通園制度の創設が重点事項です。就労要件を前提とした現行の通園給付とは別枠で月一定時間まで柔軟に使える新しい給付の創設を検討します。0~2歳児で6割に上る未就園児の成育環境を支えることや保護者の孤立防止が狙いです。現場が円滑に取り組めるよう、有識者や事業者、自治体の代表で構成する検討会を立ち上げて具体的な運用方法を丁寧に議論していきます。
また、待機児童はピーク時の1割にまで減少しましたが、待機児童が継続して一定数いる自治体もあるので、きめ細かく個別的にフォローして解消を図っていきます。
――保育の質向上について。
保育の質向上に向け、保育士の配置改善や処遇改善は引き続き重要課題です。公定価格の改善が保育士の給与にきちんと反映されているか、費用の見える化を進めながら、民間給与の動向を踏まえた処遇改善を図っていきます。
――保育現場の安全対策は。
不適切保育の防止に向け、5月に定義などを盛り込んだガイドラインを示しました。現場からは不適切な対応の具体例も示してほしいとの声もありますので、全国保育士会の取り組みとも連携しながら対応を考えていきます。また、保育所で虐待を把握した際に自治体への通報を義務付けるため、児童福祉法の改正も検討します。
――こどもの育ちヴィジョンの策定が進められています。
「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なヴィジョン(仮称)」は保育所など施設利用の有無を問わず、すべてのこどものウェルビーイング向上を図るための施策推進の羅針盤ともいうべきもの。年内策定に向けて審議会で検討中です。
幼児期が生涯の人格形成にとって最重要であるという認識を子育て当事者のみならず社会全体で共有し、こどもや保護者を切れ目なく応援できる社会を目指したいと考えます。
藤原 朋子=1965年生まれ。福岡県出身。東京大卒。89年4月厚生省(当時)に入省。